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ふしぎな化粧 世界にあったこんな化粧

お歯黒

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撮られる心得

今は、誰もがいつでもカメラを持っている時代。コンパクトカメラやスマホのカメラで、ここぞと思った瞬間にパチリ。撮られるほうもいつ撮られてもいいように瞬時の無難かつ最高の笑顔で対応。そんなスナップ写真を見ていて、歯を出して笑っている女子の姿は意外と少ないことに気づきました。“白くて整った歯並び”だったら見せたい! そう歯は女性のチャーミングを左右する重要パーツ、そして白さは、はずせないポイントです。

黒歯国

ところで日本の昔の女性はどうだったのかというと、平安時代の大和絵の貴婦人は口元を隠していたり小さく描いてあったり、口元に注目してみるとじれったいぐらいに歯の様子はわかりづらい。江戸時代の浮世絵の美人も口元はおちょぼ口。でも、数ある美人画の中にはたまに歯が見える絵があって、その一枚の口元をよく見るとなんと歯が黒く描かれています。日本の歴史では、1500年以上もの間、歯を黒く染める文化が続いていたのです。
歯を黒く? 今では考えられませんが、日本人は古くから歯を黒く染める「お歯黒」をしていました。でもお歯黒がいったいいつごろからはじまったのか、はっきりとわかっていません。ただ、3世紀頃に記された中国の歴史書、通称『魏志倭人伝』には、「黒歯国有り」の記載があり、当時すでに日本ではお歯黒が行われていたと考えられています。

上流階級から庶民に

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婦人相学拾躰 かねつけ
喜多川歌麿
/公益財団法人 平木浮世絵財団蔵

古代から行われていたお歯黒が慣習になったのは平安時代。上流階級の女性は、節目の年齢になると通過儀礼として歯を黒く染め、眉を剃り落としていました。それが室町時代には一般にまで広がり、江戸時代の中期には、結婚すると歯を黒く染めて子供を産むと眉をそり落とすという風習になっていました。江戸時代の人にとってお歯黒は既婚女性の印でもあったのです。そしてお歯黒は明治時代になっても多くの女性たちが施していました。

黒、白、それぞれの美しさ

現代の私たちからすると奇妙なお歯黒ですが、江戸時代に武家階級から庶民にまで広がっていたのは、儀礼としてだけではなく“美しい”と思えたからでは。そう感じさせた美しさは、白粉の白、紅の赤、眉墨・お歯黒の黒の三位一体で完成する様式美です。今はというとナチュラルな美しさ、やはり今のメークには白い歯が似合っています。

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