1997年より一貫して「View」と名付けられた風景画を描き続けている。大学院在学中の同年、関口芸術基金賞により渡米、ニューヨークでの滞在制作を経て、様々な視点からの風景画について模索し始める。
2003年、現代美術作家の登竜門であるVOCA展にてVOCA賞を受賞。2005年には倉敷の大原美術館主催の滞在制作プログラム「ARKO」に招聘され、自然光のみのアトリエで制作することを経験。それにより、自らの作品について改めて考え、日々行うスケッチに向き合い、それを元に描く風景画という現在のスタイルに繋がった。同館にて個展を開催。
その後も2008年には、スパイラルガーデン(東京)、2013年は、一宮市三岸節子記念美術館(愛知)にて大規模な個展開催と国立新美術館でのグループ展「アーティストファイル2009」に参加。
2013−14年に五島記念文化賞・美術部門新人賞を受賞、助成を受けイギリスにて研修。2015年、文化庁新進芸術家海外研修制度(短期研修員)及び、ポーラ美術振興財団、朝日新聞文化財団、野村財団の助成を受け、ドイツ・ブランデンブルク州主催プロジェクト内の特別展のため滞在制作し、ドミニカナークロスター・プレンツラウ(ドイツ)にて津上みゆき「日本の風景-ウッカーマルクの風景」展が開催された。
《主なパブリックコレクション》
大原美術館、オリックス株式会社、九州歯科大学、京都造形芸術大学、倉敷中央病院、国立国際美術館、第一生命保険株式会社、千葉県柏市、モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社
スケッチ、素描、下絵、そして絵画空間へ。
このシンプルな行程の奥深い可能性について、引き寄せられています。
2013−15年にかけての渡欧という、定まった場所を持たない特別な時空間に身を置き、様々な場所に出会い続け、そしてそれらを描きながら進んでいく日々は、「風景」と「時」の隙間を埋めるかのようでした。
目の前にあることを手で描きとめる。
のちに、紙の上に表現された事象の本質を、描き残された物事から丁寧に開き、どのように絵画として表現すれば、スケッチした瞬間の動機、すなわち目前に開かれていた空間が、風景と名付けられた「時」に立ち返ることができるのか。
そうして完成した絵画は、積み重なる筆跡によるものです。
流れ続ける、実体を持たない「時」とどのように接し、それらを積み上げ、繋ごうとしているのか、絵画から立ち上がる「風景」を見出していただけたらと思います。
津上 みゆき