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上村洋一 + エレナ・トゥタッチコワ
「Land and Beyond|大地の声をたどる」
2021年7月21日(水) – 8月29日(日) ※会期中無休
11:00-19:00 (入場は18:30まで)
入場無料
作品ガイドをご覧いただけます

上村は、世界各地の、主に海で行ったフィールド・レコーディングを中心にサウンド・インスタレーションを手がけてきました。サウンドを軸に、ドローイング、映像、パフォーマンスでのコラボレーションなど多岐にわたる活動は、自身の聴覚や身体性から世界の流動的なプロセスを捉えようとするたえざる姿勢から発しています。
トゥタッチコワは、歩くという行為を通して各地の自然や人の物語を採集し、写真、映像、文章、ドローイングを含むインスタレーションとして展開してきました。並行して人々とともに歩くワークショップの開催や音楽、文章執筆も手がける彼女は、表現を超えて言語や物語という側面が立ち現れるプロセスを重視しています。
「Land and Beyond|大地の声をたどる」は、それぞれ知床に関わり制作を続けている二人のアーティストによる最新の歩みを発表すると同時に、相互に交差する世界観を知床という土地(Land)から出発しながら、土地と人との関係をより普遍的に喚起しうるもの(Beyond)として、見る側に投げかけます。
本展は、知床や北方圏のリサーチも展開する四方幸子をゲストキュレーターに迎え、三者の現地滞在を含む対話を介して生み出されたものです。

「Land and Beyond|大地の声をたどる」ー世界との新たな関係へ エレナ・トゥタッチコワは、2014 年に知床と出会って以来、何度もこの土地に赴き滞在する中で、歩くことと思考することとの関係性を醸成させてきた。現地では峰浜や 朱円地区で人々と過ごし、周辺の浜辺や道、森を繰り返し歩くことで、自然と人々そして自身が相互浸透するような状態へと至った。土や水、植物、動物、人間などあらゆる存在がそれぞれの言語で土地の物語を表現している、とトゥタッチコワは言う。彼女は歩くことにより、それらに耳を傾け考えるという循環を経て、どこにもない図や言葉を生み出していく。

上村洋一は、フィールド・レコーディングを通じて海の波音や光、匂いに向き合う中で、世界が常に変化し流動していることを身体で感じてきた。かねてから流氷に惹かれ、2019 年冬にフィールド・レコーディングのため知床を訪れる。厳寒の夜、流氷の上に佇み漆黒の闇にマイクを差し出す上村は、その行為を「瞑想的な狩猟」と呼ぶ。じっと知覚を研ぎ澄ませつつ時間を過ごすプロセスは、周囲に広がる自然、そして遠方から訪れた流氷と交感するかけがえのない体験としてあるだろう。

「Land and Beyond|大地の声をたどる」は、それぞれの思いで知床と向き合ってきた上村とトゥタッチコワの最新の歩みを、ひとつの空間において交差させる初の試みである。

北の大地(ランド)の厳しい自然、岩がちな知床の 土地(ランド)。そこには人々や動植物が、生き生きと着実に根ざしている。トゥタッチコワにとって知床は、人々と自然がコミュニケーションを繰り広げる土地であり、思考のフィールドであり、物語が生成する現場である。上村にとって流氷は、冬に現れ、しばし留まり春には消滅してしまうエフェメラルな存在「仮の大地」(上村)としてある。
そしてその消滅は、次第に加速している。上村はまた、現れ消滅する「仮の大地」のイメージを生まれ育った東京湾の埋立地域に接続する。温暖化や埋立地という、自然と人工の境界が曖昧になる地平から「大地」を思い、聴こえる音と知覚できない現象のグラデーションの只中に、自身を浸透させていく。

知床という名は、アイヌ語の「シリ・エトク(大地の突端)」に由来する*。かつてこの地は海を介して各地とつながり、オホーツクやアイヌをはじめさまざまな人々が文化を育んできた。流氷もまた、大陸のアムール川を源にオホーツク海で形成され、遥々知床に漂着する。人と流氷は似ているように思われる。いずれもここにたどり着き、しばし留まりいつかは消えていく。さまざまな情報の流れがミクロ・マクロの時間や空間の中で、時には形を成しながら変化しつづけている。大地もそのひとつであるだろう。

「Beyond」は、固定的な大地の概念を、想像的に越えていく可能性である。「今ここ」だけではない、過去や未来につらなる時間や、空間的に延長されうる地や存在へと。上村とトゥタッチコワは、それぞれの方法で知床の大地に寄り添い、その声をたどろうとする。それは大地と海、歩行と思考、自然と人工、知覚できるものとできないものの間へと向けられている。

本展は、自然や人工の音(波動や振動も含む)、この地の人々の営みや声、知覚を超えた存在の気配や痕跡で溢れている。会場を歩き、時に佇みながらそれらを感知・探索することで、世界との新たな関係可能性(Beyond)を開いていくことが、訪れた各人に委ねられている。

(四方幸子/本展キュレーター)

*シリ・エトコともいう。シリ(sir)は、陸地・大地を、エトコ(etoko)は突端を意味する。

プロフィール
上村洋一(Yoichi Kamimura)

1982年千葉県生まれ。聴覚や視覚から風景を知覚する方法を探り、主にフィールド・レコーディングを素材にサウンド・インスタレーションや絵画作品、映像作品、サウンド・パフォーマンス、音響作品などを制作し国内外で発表している。 フィールド・レコーディングを「瞑想的な狩猟」として捉え、その行為を通して、人間と自然との曖昧な関係性を考察している。サウンド・インスタレーションは没入的なサウンドスケープで構成され、人間の持つ生物的な感覚を通して体験するものが多い。東京藝術大学大学院美術研究科修了。音響作品(CD)に『re/ports』、(Ftarri、2019 年)がある。
http://www.yoichikamimura.com/

【主な個展】

2021年
「冷たき熱帯、熱き流氷」(トーキョーアーツアンドスペース本郷, 東京)
2019年
「Hyperthermia——温熱療法」(「エマージェンシーズ! 039」、NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]、東京)
「仮の大地」(Marueido Japan, 東京)
2015年
「grandmother, prologue」(Space Wunderkammer, 東京)
2011年
「クリテリオム 82」(水戸芸術館現代美術ギャラリー, 茨城)
2010年
「conductor's garden」(表参道画廊, 東京)

【主なグループ展、プロジェクト、アーティスト・イン・レジデンス[A.I.R]など】

2021年
「二国間交流事業プログラム」 (Helsinki International Artist Programme, ヘルシンキ, フィンランド)[A.I.R] [予定]
「Youth(仮)」(Yutaka Kikutake Gallery, 東京)
「流氷の記憶」(しれとこくらぶ, 斜里, 北海道)
「次元の衝突点」(The 5th Floor, 東京)
2020年
「札幌国際芸術祭 2020」(札幌, 北海道)[オンライン]
「そりにひかれて」(北海道大学総合博物館, 札幌, 北海道)
「CONNECT⇄ 」(京都国立近代美術館/京都市京セラ美術館/ロームシアター京都, 京都)
「Music for Environment」(水戸芸術館, 茨城)
「道草展:未知とともに歩む」(水戸芸術館現代美術ギャラリー, 茨城)
「荒地のアレパシー」(三越コンテンポラリーギャラリー, 東京)
「アーティスト・イン・シリエトク Vol.14」(しれとこくらぶ, 斜里, 北海道) [A.I.R]
2019年
「0℃」(NTT インターコミュニケーション・センター[ICC]、東京)
「The Drowned World Anchor」(スパイラル, 東京)
「アーティスト・イン・シリエトク Vol.13」(しれとこくらぶ, 斜里, 北海道) [A.I.R]
2018年
「Sound Research in NY」(ニューヨーク, アメリカ) [A.I.R]
「trans_2017-2018 海外派遣成果報告展」(秋吉台国際芸術村, 山口)
2017年
「2017 Season 4 Residency Artists Exhibition」(台北國際芸術村, 台北, 台湾) [A.I.R]
「Sound of Therme Vals」(テルメヴァルス, ヴァルス, スイス) [A.I.R]
「Sound of Wasserhaus」(ブラウゼー, スイス) [A.I.R]
2016年
「LagoArt Residency Program」(ハンブルク, ドイツ)[A.I.R]
「普遍的な風景」(国際芸術センター青森, 青森) [A.I.R]
プロフィール
エレナ・トゥタッチコワ(Elena Tutatchikova)

1984年、ロシア・モスクワ生まれ。人間の風景認識や物語創造、歩行と想像力の関係に関心を抱く。歩行を世界の道づくりという表現方法として捉え、様々な土地で、歩き、人とかかわりながら、制作を続けている。土地に秘めた物語を探り、写真、映像、文章、ドローイングなどで表現する。また、定期的にウォーキングや地図作りのイベントを行う。
2003年までは 11年間、モスクワ国立音楽院付属中央専門音楽学校で音楽を学び、その後、ロシア国立人文大学の東洋文化・古典古代学部では日本文学を専攻。
東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現領域 博士後期課程修了。博士(美術)。
http://elenatutatchikova.com/

【主な個展】

2021年
「風の日は島を歩く | Days With the Wind」高松アーティスト・イン・レジデンス、女木島、高松市
2020年
「ウォーク・イン・プログレス | Walk In Progress」光兎舎ギャラリー、京都
2018年
「道は半島をゆく」 知床半島内複数会場 、北海道斜里町
「With Ice, Comes New Sun」 NOMA t.d.、東京
2017年
「On Teto's Trail」 Gallery TRAX、山梨
「ひつじの時刻、北風、晴れ」STUDIO STAFF ONLY 、東京
「With My Dinosaurs」kumagusuku 、京都
「In Summer: Apples, Fossils and the Book」BOOK MARUTE、高松
2016年
「In Summer: Apples, Fossils and the Book」POST、東京
「In Summer, With My Dinosaurs」nani、東京
2015年
「After an Apple Falls From the Tree, There is a Sound」 POETIC SCAPE、東京
東京写真月間「To the Northern Shores」 MUSEE F、東京

【主なグループ展・アートフェスティバル】

2016年
茨城県北芸術祭、茨城県大子町
2015年
はじまりのしじま“In the Beginning, Silence was Always Silence”」Takuro Someya Contemporary Art ,東京

【単著】

・エレナ・トゥタッチコワ『林檎が木から落ちるとき、音が生まれる』torch press (東京、2016)詩・エッセイ
・「干潮を待つ」 (最果タヒ展オフィシャルブック『一等星の詩』 sou nice publishing、秋田、2020)
・「迷子 三つの詩」(『USO うそ』 rn、東京、2019)
・「Walking Imagination - 歩く想像力」(『歩きながら考える step9』、歩きながら考える編集部、東京、2019)
・「霧の風景を歩く - フィールドワーク、道作りと想像力について」(IMA 特集『土地の記憶22号、東京、2017)

【翻訳】

・大岡信編『現代詩の鑑賞101』(アレクサンドル・ベリャーエフと共訳)New Literary Observer(モスクワ、2013)
・菊池秀行『幽剣抄』Hyperion(サンクト・ペテルブルグ、2013)
・夏目漱石『夢十夜』(エフゲニヤ・サハロワと共訳)、Foreign Literature9月号(モスクワ、2013)

【主なワークショップ】

・「シレトコ・ウォーキング・プロジェクト」2017年より年に 1~2回北海道・知床半島で開催する企画(2020年10月「斜里の旧道を辿る」、2018年9月「獣道」知床の森を歩くツアーとトークイベントなど開催)
・「京都ウォータースケープス」エレナ・トゥタッチコワ企画ワークショップシリーズ(京都、無鄰菴など複数、2020年8 月)
・「川の音を聴く、川の音になる」2 日間の集中ワークショップとパフォーマンス(京都精華大学、2019年)
・アートプラクティスとフィールドワークをテーマとした、1週間の集中ワークショップ、元智大學アート・デザイン学部、桃園市、台湾、2019年
・Museum Startあいうえの「うえの!ふしぎ発見:アーティスト部」(国立国会図書館国際子ども図書館・東京都美術館企画、東京、2017年)等

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